*毎日新聞 2011年4月13日 東京朝刊 東日本大震災:福島第1原発事故「レベル7」 情報遅れに世界疑念 各国が速報 ◇「自国影響ない」強調目立ち 福島第1原発事故の国際評価尺度(INES)がレベル7になったことは、世界各国のメディアが速報した。菅直人首相は12日の会見で情報隠しを否定したが、国際社会では、日本政府が適切なタイミングで必要な情報を出していないのではないかという疑念が出されている。一方、各国の報道は、パニックの発生を警戒してか、同じレベル7だったチェルノブイリ原発事故とは違うことや自国の環境に影響がないことを強調した。 菅首相は会見で「私が知った事実関係で情報を表に出さないようにするとか、隠すように言ったことは何一つない」と強調した。日本政府の情報公開が遅すぎるという批判を意識したものだ。 情報公開の遅れは、情報そのものへの疑念にもつながる。韓国のハンギョレ新聞(電子版)は「日本はチェルノブイリ原発に次ぐ事故と分かっていながら、レベルを低めに発表していたのではないかという疑惑も出ている」と伝えた。 約2300万人という人口規模からは世界でも突出した金額となる130億円の義援金が集まった台湾でも、原発事故では対日不信が強い。台湾紙・経済日報は12日の社説で、日本側が周辺国・地域との情報共有に積極的になるよう共同歩調で圧力をかける必要性を説いた。 国際原子力機関(IAEA)のあるウィーンでも、専門家から「事故は安定に向かっていると聞いてきただけに違和感がある」という声が出た。 一方、英ガーディアン紙(電子版)は「日本の当局者たちは最近までレベル5から上げる必要はないと示唆していた」と批判的に書きつつ、「チェルノブイリ事故と同じレベルに引き上げたのは行き過ぎだ。悲観的になりすぎている」という米サンディエゴ州立大の専門家、ムラリー・ジェネックス准教授の見方を紹介。シンガポールのテレビ「チャンネル・ニュース・アジア」も「福島の事故は格納容器内で起きており、チェルノブイリとは異なる」と説明した。 チェルノブイリとは違うという論調は他国でもみられる。 ロシア科学アカデミー・原子力エネルギー安全発展問題研究所のアルチュニャン副所長は12日、ノーボスチ通信に「(レベル引き上げは)専門家が前から知っていた事実を確認したものだ」と話す一方で、放射性物質による汚染については「レベル引き上げでロシアを脅かすものは何もない」と述べた。 さらに、ロシア国営原子力企業ロスアトムのノビコフ広報局長は「レベル7は行き過ぎで、正当なレベルは最大でも6。最初の評価は低すぎたが、今度は逆に高くなりすぎた」と指摘した。 中国でも中央テレビが「放射性物質の放出量はチェルノブイリの10分の1」と強調しながら、「レベルは上がっても影響は数十キロの範囲に限られ、中国の環境に大きな影響は出ない」とする専門家の見方を紹介。原発建設に積極的なインドでは、プラサード駐日大使がインドのテレビ各局に「東京は平穏だ。レベル7になったのは、過去1カ月間の放射性物質放出量からの判断だ」と述べ、国民に冷静な対応を求めた。 自国への影響を否定する記事などが目立つ背景には、パニックを防ごうという配慮もありそうだ。韓国紙記者は「日本政府の対応への批判とは別問題だ。科学的知見に基づき、心配しなくてよいと読者に伝えることは必要だ」と話す。 ただ、事故収束の見通しが立たないことへの不安感は根強い。韓国・聯合ニュースは、強い余震が続き、放射性物質の放出が止まっていないことから「(チェルノブイリと)どちらが深刻か判断するのは容易ではない」と指摘した。 *毎日新聞 2011年4月12日 22時34分 更新:4月13日 0時11分 福島第1原発:「チェルノブイリ超える」東電担当者が発言 東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理が12日午前に行った会見の発言が海外メディアに取り上げられ、波紋を広げている。 会見で松本代理は、政府がチェルノブイリ事故と同じ「レベル7」と評価したことを問われ、「事故の様相が違うとはいえ、放射性物質の放出量という観点から見ればチェルノブイリに匹敵する、あるいは超えるかもしれない」と発言。直後に真意を問われ、「言い過ぎたかもしれない。依然として事態の収束がまだできておらず、現時点で完全に放射性物質を止め切れないという認識があるということだ」と釈明した。 この発言について、米ロイター通信が会見終了の約10分後、「東電がチェルノブイリを超える放射能漏れを懸念」として速報。これを引用した英BBCは電子版国際ニュースで読者数1位となるなど世界の注目が集まった。また、米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)は「福島第1原発からの放射性物質の放出量が、やがてはチェルノブイリを上回る可能性がある」と東電自身が認めていることを紹介し、事態収拾の見通しが立っていないことを強調した。【山田大輔、ワシントン古本陽荘】 *毎日新聞 2011年4月13日 10時36分 (2011年4月13日 11時01分 更新) <福島第1原発>「チェルノブイリ」に遠く及ばず IAEA 【ウィーン樋口直樹】福島第1原発事故の国際評価尺度(INES)がチェルノブイリ原発事故(86年)と同じ「レベル7」に引き上げられたことについて、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は12日、福島原発事故の深刻さは史上最悪とされるチェルノブイリ事故に遠く及ばないとの見方を示した。レベルの引き上げに伴う無用の混乱を避ける狙いがあるとみられる。 IAEAのフローリー事務次長は会見で、チェルノブイリ事故について「原子炉自体が大爆発し、激しい黒鉛火災が続いた。放射性物質が空高く吹き上がり、一帯に飛び散った」と説明。「福島では全ての原子炉が地震で停止し、原子炉圧力容器自体が爆発することはなかった」と両者の違いを強調した。 同氏はさらに、福島原発からの放射性物質の外部放出量37万テラベクレル(保安院推定)と、チェルノブイリ事故の放出量520万テラベクレルを引き合いに、「両者には大きな違いがある。事故の構造はまったく違う」と強調した。 INESはレベル7の評価要件のひとつとして、「ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の放射性物質の外部放出」を挙げている。福島原発の放出量はこれに該当する。 一方、フローリー氏は「INESの尺度は行動のための尺度ではない」と述べ、レベルの引き上げによって避難区域の拡大など特定の行動が課されるわけではないとした。「日本の担当者は尺度が見直される前からやるべきことをやっていた」とも語り、レベルの引き上げによって事故を取り巻く環境が劇的に変わることはないとの見通しも示した。 *共同通信 2011/04/13 08:48 チェルノブイリ級ではない フランス研究所が見解 【パリ共同】フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のグルメロン放射線防護局長は12日の記者会見で、国際評価尺度(INES)の暫定評価で、最悪の「レベル7」とされた福島第1原発事故について、重大だが旧ソ連のチェルノブイリ原発事故には「匹敵しない」との見解を明らかにした。 同局長は「現時点で福島事故は極めて重大だが、チェルノブイリ級ではなく、将来そうなることもない」と指摘。 福島事故で深刻な放射性物質の放出が起きたのは3月12日から21日の間で、放出量はチェルノブイリ事故の10分の1にとどまっている点が「根本的に違う」と説明した。 局長は、放射性物質の広がりについて、風向きや気象の影響で福島原発周辺の限られた地域にとどまっているとも指摘。欧州への影響は「チェルノブイリ事故と比べれば、無に等しい」と述べた。 *ロイター 2011.04.13 Wed posted at: 11:44 JST 福島第一原発、事態は「静止」するも「安定」せず 米NRC委員長 ワシントン(CNN) 米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は12日、事故の深刻さを示す暫定評価が最悪の「レベル7」に引き上げられた福島第一原子力発電所について、事態は「静止」状態だが「安定」状態には至っていないとの見方を示した。上院環境公共事業委員会の公聴会で語った。 ヤツコ委員長は、静止状態は「一日単位で大きな変化はみられない」ことを意味し、安定状態とは「今後何かが起きたような場合、さらに大きな問題が生じる恐れがない」ことだと説明。静止から安定へ移行させ、原子炉と使用済み燃料の冷却能力を長期的に確保するための取り組みが焦点になっていると述べた。 公聴会ではこのほか、地震活動の活発な地域に原発68 件を抱えるカリフォルニア州選出のバーバラ・ボクサー上院議員が、同州住民を守るための安全対策強化を主張。日本が現在のような危機的状況に陥る可能性は非常に低いとされていたと指摘し、どんな自然災害が起きるかを予想することは不可能だと強調した。 また環境保護局(EPA)のジャクソン長官は、米国内で採取した大気や水の検査を続けていると説明。一部地域で放射性物質の濃度がわずかに上昇しているものの、問題となるレベルを大きく下回っているとして、「米国内で有害なレベルに到達したことはないし、今後も考えられない」と述べた。 *テレビ朝日 2011/04/13 11:52 【原発】「レベル7引上げは妥当」米原子力規制委 アメリカのNRC=原子力規制委員会のヤツコ委員長は、福島第一原発事故がレベル7に引き上げられたことについて、「引き上げは妥当」という認識を示しました。 NRC・ヤツコ委員長:「レベル7への引き上げは特段、驚くべきことではありません。非常に深刻な事故であることはすでに明白だからです」 ヤツコ委員長は、議会の公聴会で原発の状況について「安定していない」と証言し、炉心などの長期的な冷却が必要だと強調しました。「仮に冷却機能が失われれば、最悪の場合、これまでよりも大規模な放射性物質の拡散が起きる可能性がある」とも指摘しました。また、アメリカ国内でも同様の事故が起きて日本のような事態が長引く状況を想定し、新たな避難計画の策定を検討していることも明らかにしました。 米太平洋軍・ウィラード司令官:「(福島第一原発の)状況は落ち着いている。少しずつ良い方向に向かっている」 アメリカ太平洋軍のウィラード司令官は「毎日、無人探査機を飛ばし、原発の温度や放射性物質による汚染状況を調査するなど事態を注視している」としたうえで、状況は少しずつ良い方向に向かっていると説明しました。また、「海兵隊の専門部隊が放射性物質の監視などにあたり、自衛隊の活動を支援している」と述べました。 *ロイター 2011年 04月 13日 15:17 JST 福島原発事故「レベル7」、専門家は評価制度に異論 [ニューヨーク 12日 ロイター] 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の事故の深刻さを示す国際評価が引き上げられたことを受け、海外の専門家からは疑問や評価制度自体の見直しを求める声が出ている。 日本の原子力安全・保安院と原子力安全委員会は12日、福島第1原発事故の「国際原子力事象評価尺度(INES)」を放射性物質の放出量を踏まえて「レベル5」から2段階引き上げ最悪の「レベル7」にしたと発表した。これまでに「レベル7」に判定されたのは1986年に起きたチェルノブイリ原発事故のみ。福島第1原発事故が、欧州に大量の放射性物質をまき散らし、周辺に数十人の死者を出し、その後多数のがん患者を出したチェルノブイリ事故と同じくらい深刻と判定されたことになる。 しかし、異論も出ている。 南カリフォルニア大学のNajmedin Meshkati教授(民事・環境エンジニアリング)は「福島の事故はチェルノブイリほど深刻ではない。福島がレベル7なら、評価尺度を見直しレベル8か9まで作る必要がある」と言う。 INESは、チェルノブイリ事故を受け、原発事故の深刻さを一般に示すために国際原子力機関(IAEA)などによって1989年に策定された。地震の規模を示すマグニチュードと同様、事故の深刻さが高くなるほど数字が上がり、最高がレベル7「深刻な事故」となっている。 米カーネギー国際平和財団のアソシエート、ジェームズ・アクトン氏は、福島とチェルノブイリの比較上の不一致は「『7』が広範な罪をカバーする」という事実からきていると指摘する。 福島とチェルノブイリがレベル7とされたのは、事故の深刻さが同程度という理由ではなく、放射性物質の放出量が規定値に達したためだとしている。 <混乱を招く評価付け> 事故の本当の深刻さをめぐる混乱は、評価する当局が定まっていないことにも関係する。評価は、原発を運営する企業、政府の所管機関あるいは科学研究機関など、当該国によって異なる。 カリフォルニア大学のケネス・バリッシュ教授(物理学)は「明らかに(福島の事故)はチェルノブイリほど深刻でない」と主張。 「放射性物質の放出量がチェルノブイリと同程度としても、事故の内容や対応の違いから人体への影響は福島の方がはるかに小さい」との認識を示した。 しかし福島は、3基の原子炉および使用済み燃料棒プールが関係する事故。地震発生から1週間以内に水素爆発も起きている。チェルノブイリは原子炉1基の事故だった。 原子力業界で長い経験を持つフェアウィンズ・アソシエーツのチーフエンジニア、アーニー・ガンダーセン氏は、3基の原子炉と燃料棒プールが冷却機能を失うという事態は明らかにレベル7に相当すると指摘した。 <政府・東電は説明不足> 今回の評価引き上げについて、専門家からは、日本政府は国民や近隣諸国がそういう事態も想定できるような措置を取ることができたはずだ、との声も出ている。 IHSエナジー・アジア・パシフィックのアナリスト、トマス・グリーダー氏は「日本政府と東電は、危機が発生した時に原子炉の燃料棒プールの状況をほとんど把握できていないことを強調できたはず」と指摘する。 政府と東電は、当初の評価はその時点で入手している極めて限定的なる情報に基づいたものであり、放射性物質の放出量のデータを収集するには時間を要し、評価はより深刻な方向に修正する可能性もあると説明できた、という。 専門家は、福島第1原発の問題はまだ完全に制御できておらず、水素爆発など事態がさらに深刻化する可能性があると警告している。 (Scott DiSavino/Eileen O'Grady記者;翻訳 武藤邦子;編集 吉瀬邦彦) *産経ニュース 2011.4.13 12:39 「初めから隠していた」韓国各紙が日本政府を厳しく批判 【ソウル=加藤達也】福島第1原発の放射能漏れ事故の評価が、最悪の「レベル7」に引き上げられたことについて、13日付の韓国各紙は厳しい日本政府批判を展開した。 中央日報は「『チェルノブイリ級事故』 日本政府、初めから隠していた」との見出しで報じた。 記事では「レベル7」は、「放射性ヨウ素131が数万テラベクレル原子炉外部に漏れた状況」と規定されていると指摘。一方、12日の原子力安全・保安院の説明で、放出された放射性物質の大部分が3月11日から16日の間の分だったことを考え合わせ、「日本政府は(事故発生)当時に、直ちにレベル7に引き上げていなければならない状況だった」と批判した。 東亜日報は福島原発の事故を特集。「深刻さ否認した日本 “いまさらレベル7”」の見出しで報じ、これまで最悪の事故とされてきたチェルノブイリと比較。「チェルノブイリは10日で状態が安定したが、福島では1カ月を超しても危険だ」とした。 *毎日新聞 2011年4月13日 20時43分 福島第1原発:レベル7で国際的な推進路線に冷や水も 【ウィーン樋口直樹】福島第1原発事故の国際評価尺度(INES)が史上最悪の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」に引き上げられたことを受け、国際原子力機関(IAEA)は、チェルノブイリとの違いを強調するなど警戒感をあらわにした。ロシアやフランスなど原発大国からは日本の「過剰評価だ」と指摘する声も相次いだ。背景には、国際的な原発推進路線の「後退」への危機感の強さが読み取れる。 「原子力の平和利用」の旗振り役であるIAEAは、福島原発事故を「大きな挑戦」(天野之弥事務局長)と受け止めている。 天野氏はウィーンで開催中の原子力安全条約検討会合の冒頭、福島原発事故にも関わらず「原子力への関心の背後にある基本的な要因は変わらない」と指摘。国際的なエネルギー需要の拡大や気候変動、不安定な化石燃料価格への対策として原子力の有用性を訴えた。 一方、IAEAには「原子力安全策の確保、向上」という重要な使命も課されている。このため、天野氏は「原子力の安全性に関する世界の懸念を深刻にとらえなければならない」とも強調、加盟国などに、国際的な安全基準の順守や透明性の確保を訴えている。 原発推進と安全確保の両立を図るIAEAだけに、福島原発事故への評価には慎重にならざるを得ない。 フローリー事務次長は12日の記者会見で、日本の「レベル7」への引き上げには理解を示しつつ「福島原発事故とチェルノブイリ事故はまったく違う」と何度も力説。レベル引き上げに伴う過剰な警戒をいさめる格好になった。 IAEAによると、新たに原発計画を検討している加盟国は昨年末時点で60カ国以上。既に原発計画を実施している29カ国のほぼすべてが、計画継続を予定していたという。 86年のチェルノブイリ事故から25年。「原子力ルネサンス」の到来が叫ばれていただけに、原発先進国の日本で起きた福島原発事故の評価は、今後の国際的な原発政策の流れにも大きな影響を及ぼすことになる。 *日経新聞 2011/4/14 0:00 [FT]福島原発、レベル7は適切か (2011年4月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 日本の当局は福島第1原子力発電所の事故の深刻さを表す評価尺度を2段階引き上げて最も高いレベル7にしたことで、意図せずに人々をミスリードし、事態が突如悪化し、世界最悪の原発事故であるチェルノブイリ並みに深刻だと思わせてしまったかもしれない。 ■レベル7は「暫定的」 「レベル7への評価引き上げには少し驚いている」。英セントラル・ランカシャー大学のローレンス・ウィリアムズ教授(原子力安全確保が専門)はこう話す。「損傷した3つの原子炉や4つの使用済み燃料プールの状況に大きな変化はないし、大気中に漏れ出す放射能が突然増えたわけでもない」 豪モナシュ大学の原子力安全問題の専門家であるジョン・プライス氏は、「(引き上げは)今日の状況が昨日よりも悪いという意味ではない。今回の事故が全体としてこれまで考えられていたよりも深刻だということだ」と言う。 国際原子力機関(IAEA)は、事故の深刻度と安全性への影響を統一した尺度で示すため、20年前に国際原子力事象評価尺度(INES)を定めた。7段階の尺度はシンプルに見えるが、評価の基準は非常に複雑で、IAEAは218ページに上るハンドブックを発行している。 こうした基準に照らし、日本の原子力安全・保安院は福島原発の事故を「暫定的に」レベル7と評価すべきだと判断した。3月11日の地震と津波以降、周囲に放出された放射性物質の総量は1986年のチェルノブイリ原発事故のおよそ10分の1だ。 ■はるかに深刻だったチェルノブイリ 原子力の専門家らはチェルノブイリの放射線の影響の方がはるかに深刻だったとの見方で一致している。理由は主に2つある。 まずチェルノブイリでは、激しい爆発が核物質を上空9キロまで吹き飛ばし、ウクライナから遠く離れた場所にも放射性物質をまき散らした。事故から25年経っても、現場から2000キロ離れた英国北ウェールズの農家は、汚染物質のため、いまだ土地利用を制限されている。 次に日本の当局は福島原発の事故直後、緊急作業員と地元住民を放射線被曝(ひばく)から守った。英ポーツマス大学の環境物理学者、ジム・スミス氏は「住民を避難させ、食品の摂取禁止を発令し、ヨウ化カリウム錠剤を配布することで、日本の当局は福島原発による最も深刻な健康被害を防いだはずだ」と言う。 4号機の汚染水をくみ出す作業(4月12日)=東京電力提供[AP] 「チェルノブイリでは、地元の人々は事故後およそ48時間経つまで避難させられなかった。原子炉が燃えているのに子供たちは外で遊び、ヨウ化カリウム錠剤も配られなかった。チェルノブイリ事故が起きてから何週間も人々は放射性ヨウ素に高度に汚染された牛乳や野菜を食べ続けた」 福島第一原発の周辺では、短命な放射性ヨウ素131(半減期は8日間)のレベルが急速に低下しており、事故からまもないころの10%程度に減退した。 ■放射性セシウムの汚染に懸念 懸念は放射性セシウム137の汚染に移っている。特に懸念されるのが、原発の北西に位置する土地の汚染だ。放射性セシウム(半減期は30年)はより長期に及ぶ汚染物質で、これがチェルノブイリ事故の放射性降下物に汚染された欧州一部地域で今も移動制限が敷かれている主な理由だ。 「放射性セシウムの汚染により、例えば食品の摂取禁止などの対策を日本の一部地域で数十年間実施し続ける必要が出てくるかもしれない」と前出のスミス教授は言う。 チェルノブイリと異なり、福島の原子炉は海岸沿いにある。事故は空気や土地、上水道を汚染しただけでなく、大量の汚染水(これまで量は確認されていない)を海に放出し、海洋生物を脅かしている。最も被害を受けやすいのは、貝類や海草を含む沿岸、近海漁業だ。 ■レベル6への引き下げも 福島原発はチェルノブイリ並みに深刻だとする見出しは、世界の原子力産業で働く人々をさらに身震いさせるだろう。彼らとしては被災した原子炉で作業する日本のチームが早期に緊急事態を収束させることを祈るしかない。 そうなれば、当局は福島原発の事故を暫定的なレベル7から、より恒久的なレベル6に引き下げることができるかもしれない。 By Clive Cookson (翻訳協力 JBpress)
by norikoiida
| 2011-04-13 15:40
| 日記
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